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紫陽花最終話。
なんだか、ほのぼのと、一仕事終えたって感じで仕上がっちゃった^^;
でもまぁ…みんな仲良しが一番です!
ありがとう…
そう直に脳内に響いた声に、ナルトが一筋の涙を落とした。
「…帰ろうか?」
ナルトがグッと涙を己の袖で拭い、小さなお墓に手を合わせた。
「おう…」
覇気のない声に、カカシが手をソッと掛け、グッと抱き寄せると
へへへ…と、どうにか笑い声を上げる。
封印を解いたおかげで、いろはの魂は動く事を許された。
だからこそ、いろははありがとうと残したのだろう
カカシもナルトも、心にまだ残る少女を思い扉を閉めた。
その横に会った細い道を辿っていると、目の前にザッと音を立て
現れたカカシの分身と若者。
「サスケ!?」
「うすらトンカチ!さっさと帰るぞ!」
「お、おう!」
泣いたであろう涙の痕に気が付きサスケがカカシを睨むと
カカシも苦笑いで返してくる。
恐らくはこの涙の痕はカカシが付けたものではないだろうと
サスケも悟り、無言で帰路に付こうとしたが
「ナルト!」
その声にナルトの肩がビクッと揺れた。
「大丈夫か?」
目の前に立った男…うみのイルカ。
己に傷を付けたと言う認識は無かった…
けれど、この場所に居るはずのない人間が何故居るのか。
「イルカ…先生?」
「あぁ、良かった…怪我は大丈夫そうだな?」
「え?あ…えっと…」
普通の人間だったらそんなにすぐには回復しない傷。
九喇嘛の力がそうさせてるのはイルカだって知ってるだろう
けれど…それを知られる事に凄く抵抗感があった。
幼い頃の自分を知っているこの人は
自分が歩んできた忍びの世界を知らない。
いや、報告書では知っているだろうが…
それはイルカが悪い訳でもナルトが悪い訳でも無いのだが
その隔たりがどうしてもナルトの中で拭いきれなかったのだ。
ただ、それでも自分を探してこの場所まで来てくれた事や
こうやって、自分を見ててくれる事に嬉しさもある。
そんな葛藤も、長くは続かず
今無事でみんなが一緒に居る事が何よりもの救いだろうと
ナルトは前を見据えた。
「帰ろっか…」
カカシの声に、皆が首を縦に振り
サクラの待つ場所までもう少しと言う所で、ザッと空気が揺れた。
その空気がゴオッと音を立てると、ガラガラと音を立てて崩れて行く岩肌にナルト達は
慌ててその場所に視線を送った。
主が、その場から消え
塔の結界もなくなり、守られていた場所が音を立てて崩れて行く。
一気に年を取っていく町並み。
目の前で崩れゆく家や塔…そして今歩いて来た道も…
「チッ、結界の外へ急ぐぞ!」
サスケのその声に皆が一斉に足にチャクラを溜め飛び上がった。
まるで一気に風化を始めたように塔は崩れ、町並みは急にボロボロと老朽化する中
サクラの待つ結界の外までたどり着いた。
このままでは、時間軸がおかしくなるから早く出なければ
この老化の時間に巻き込まれると、イルカが告げるとカカシもコクリと首を
上下させ、その場でサクラと連絡を取る。
が…
一向にサクラからの返事は無く
サスケが指を立てて一応のために準備していたマンダに声を掛ける。
それから数分で、結界がゆらゆらと揺れて
ピキピキと音を立ててその結界が歪んでいるのとは違う傷を作っていく。
◆
「もう目の前に、居るぞ」
その急に掛けられた声にヒッと声を上げたサクラが恐る恐る振り向くと
頭の上には、サスケの蛇、マンダが姿を現した。
「目の前って帰って来てるの!?」
そう声を上げて結界の中を見るが、中の風景は全く変化を見せていない。
「もしかしてこれって、鏡反結界!?」
鏡の様になっていて中の様子を知られない様にする結界で
映し出される風景は、四季ごとには違うが、周りと同化するために
鏡のような機能がある古い結界だ。
綱手の持つ資料で読んだことがあったとサクラが
印を組み、鏡を壊すための術を掛けると、あっという間に4人の姿が目に入った。
ただ、向こうからは見えていない様で
キョロキョロと辺りを見回している姿が目に入ると、サクラが
怪我をしていないのを一人ひとり確認してから、結界を壊す事に集中した。
印を組み、壁に穴をあけるために拳に大きな力を溜め
一発…
けれど、壊れるどころか、ゆらりと結界を揺らすだけとなり
更に大きな力を込める。
ふーっ…
息を吐き出し、皆が無事に出られるのを祈りながら
「しゃ~~んなろぉぉ!!!!!」
解放された力が、結界をひび割れさせる。
けれどもそれが限界で、サクラも肩で息をしている状態。
「悪いけどサスケ君にそっちからも力を加えてって伝えてくれないかしら?」
その言葉に嫌そうに目を閉じたマンダ。
答えを貰えなかったが、現状のままでは確実にまずいのは解っているだろう。
サクラがもう一度、力を籠めて殴ってみたが、ヒビは増えても
空間を裂き切るまで行かず、先ほど使った方法を試してみるが
それも失敗に終わった。
「もぉ!何で空いてくれないのよっ!」
既に、チャクラを放出しながら何度も殴りつけている手に
痺れが襲ってくる。
そんな時だった。
「きゃぁ!!!!!」
マンダにぱくりとベストを食まれ、体がその場所から引き離されたと同時だった。
フオン…と風が一瞬舞った後に、さらにその風が熱風を巻き起こし
ヒビがミシミシと広がり、その広がった場所にあいた穴から
炎と風が舞った。
「サスケ君!ナルトっ!」
二人が出て来た姿にサクラが頬を緩め、ふにゃりと笑うと
二人とも、サクラに向かって視線を向けた。
その後からポカンとしたイルカとあきれたような表情のカカシをみて
何が起こったの悟ったサクラが苦笑いを漏らした。
「流石サスケ君!」
と、マンダに食まれたままのサクラが乙女モード炸裂で言うと
ナルトが何やら自分もやったんだと主張するがそれは相変わらずスルーで
サクラは地上へと降り立った。
「みなさんお疲れ様です!」
背後ではゆるゆると揺らいだ結界が回復も出来ないまま
グニャグニャと揺れ動き、数時間でその町一つが完全に廃墟と化した。
「まさか、ナルトとサスケがこんな合わせ技を使うなんて…」
「ま、いっつもチグハグになるんだけど今日は見事に決まったね?」
と、イルカとカカシの会話にナルトは”当たり前だってばよ!”と偉そうに胸を張る。
サスケがフンと鼻で笑い飛ばして知らぬ顔をするが
七班のポテンシャルの高さはカカシが一番良く知っている。
「お前ら今日はご苦労さん。帰って一楽でも食べに行こうか?」
と、珍しくカカシのお誘いに、皆は十二分にやる気を出して木の葉へと向かった。
「それにしても、ナルトの技…凄いですね」
「もう、上忍レベルだからねぇ~オレも力ではもう勝てないと思うよ。」
「カカシさんが!?」
「ええ、もう世代交代かも知れないですね」
その言葉に、三人の成長を目の当たりにしたイルカが涙ぐむ。
嬉しいような…寂しいような…けれど、いつも活躍をしている三人の事は
随時報告で知っていた。
けれどやはり、目の当たりにしないとどうしても認められなかったのかもしれない。
イルカは気を取り直して再び三人の後姿を見て
優しく微笑んだ。
「カカシさん…本当に、アイツらの先生で居てくれてありがとうございます」
「何言ってるのよ…先生をしていた時期なんて本当に少なかったですよ。
サスケは里抜け、サクラは綱手様…ナルトは自来也様…それぞれに個々の能力を高めたんです。
私なんて、忍びとしての切っ掛けにしかすぎませんから。」
「ナルトが…貴方の凄さを話す度に…凄く不快だったんですけどね?」
と、クスッと笑いながら宣戦布告のような言葉にカカシがニッと笑った。
「まだ、置いて行かれる訳にはいきませんからね。」
そう告げるとカカシも足を速めナルトと並んで前へと進んだ。
サスケがそんな姿に大人気ない…と、呟き自分の体を二人の間に押し込むと
今度はサクラがサスケとカカシの間に入り、4人で並んで里へ戻る姿。
その姿に、これから先も変わりがないように祈ると
ナルトが徐に己を見て叫んだ。
「イルカ先生!遅いってばよ!早くこねぇと、置いてくぞ~」
その言葉に、なにお~!と叫びながら五人で並んで里へと向かった。
FIN
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